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TimesFM 3とは?多変量の売上・需要予測と導入判断を解説

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TimesFM 3で扱える売上・需要予測のデータや、従来版・BigQuery版との違いを解説します。商用利用の制約と精度評価の方法も整理し、需要予測を担う事業責任者が試験導入と本番採用の可否を判断するための材料をまとめます。導入前に確認すべき条件が分かります。

WRITTEN BY 株式会社atypical

はじめに

TimesFM 3は、過去の売上だけでなく、関連商品の動きや販促予定なども使って将来を予測する時系列基盤モデルです。 需要予測を担う事業責任者は、TimesFM 3によって欠品や過剰在庫を減らせるかを検証できます。

検証前に確認したいのは、入力データ、既存手法との精度差、商用利用の条件です。 販促、休日、天候を入力しても、予測精度が上がるとは限りません。 将来の予測時点では取得できない情報を使うと、検証時だけよく当たる予測になるためです。

事業責任者は、複数店舗や複数商品の需要予測に使えるか、対象業務で効果が出るか、本番環境で利用できるかを分けて確かめる必要があります。

TimesFM 3は複数系列と共変量を扱える

TimesFM 3では、複数の売上系列をまとめて予測できます。 過去の来店者数や将来の販促予定も予測材料に加えられるため、単一商品の過去実績だけでは捉えにくい商品間の関係や外部要因も入力できます。

Google Researchが2026年8月に発表したTimesFM 3は、用途ごとの追加学習を前提とせずに使える時系列基盤モデルです。 公式解説によると、330百万個のパラメータを持ち、実データと合成データを合わせた1兆超の時点データで事前学習されています。

Google ResearchのTimesFM 3解説では、入力を次のように分類しています。

  • 目的変数は、予測したい商品別売上、店舗別客数、時間帯別注文数など
  • 過去共変量は、過去の来店者数や在庫量など、予測対象との関係を調べたい履歴
  • 過去未来共変量は、販促日や休日、発表済みの価格など、予測期間についても事前に分かる情報

来月の商品別需要を予測する場合、商品ごとの販売数が目的変数、過去の客数が過去共変量、確定済みの販促日が過去未来共変量に当たります。

ただし、天候予報のように後から更新される情報には、予測を作った時点で入手できた値を使います。 当時の値を保存していなければ、将来の情報が検証へ混入し、公平に評価できません。

TimesFM 3と従来版の違い

TimesFM 2.5までの中心は、一つの系列ごとの予測でした。 TimesFM 3は、複数系列と共変量を一つのモデル内で扱います。 担当者は売上の周期だけでなく、販促や関連商品の動きも含めて計画案を比較できます。

判断項目TimesFM 2.5までTimesFM 3
予測対象原則として単一系列複数の関連系列を同時に予測可能
共変量2.5では外部回帰による対応過去のみ、過去と未来の共変量を標準で扱う
出力方法将来を区間ごとに順次生成予測期間全体を一度に生成
不確実性2.5は追加の分位点ヘッドに対応各時点について10%から90%まで9段階の分位点を出力

発注担当者は、一つの予測値をすべての商品へ同じように適用する必要はありません。 在庫切れの損失が大きい商品と、廃棄費用が重い商品とでは、参照すべき値が異なるためです。

需要の上振れと下振れを含む範囲を示す分位点予測は、この判断に使えます。 在庫切れの損失が大きい商品では上側の予測、廃棄費用が重い商品では中央付近の予測を参照するなど、発注方針に応じて値を選べます。 ただし、出力された範囲が自社データにも合うかどうかは、別途検証が必要です。

売上と需要の予測で見込める効果

TimesFM 3の効果は、予測誤差だけでは判断できません。 事業責任者は、欠品、余剰在庫、機会損失がどれだけ変わったかも確認します。

TimesFM 3は、次の条件に当てはまる業務で検証候補になります。

  • 商品や店舗など、互いに関係する系列が複数ある
  • 販促日、休日、価格改定などの将来予定が記録されている
  • 新商品や短い履歴の系列が多く、系列ごとのモデル作成に手間がかかる
  • 予測値を発注量や勤務計画へ結び付ける担当者が決まっている

多数の商品や拠点を短期間で試す場合、系列ごとにモデルを作る作業が負担になります。 この負担を減らす方法が、個別業務向けの追加学習をせず、事前学習済みモデルを新しいデータへ適用するゼロショット予測です。 系列ごとの学習作業を減らせるため、多数の系列を扱う検証に向いています。

公式ベンチマークの成績がよくても、自社の売上データで既存予測を上回るとは限りません。 販促の種類、欠測、急な価格変更、終売などの条件によって結果が変わるためです。 導入効果を判断する担当者は、平均誤差に加え、欠品日数や廃棄量を減らせる予測になったかを確かめます。

TimesFM 3の試験導入では利用条件も確認する

試験導入では、公開モデルの利用条件を最初に確認します。 現時点で公開されている標準モデル重みは、非商用かつ非本番用途に限られます。 そのため、商用システムへそのまま組み込むことはできません。 社内検証と商用システムへの組み込みは、別々に判断します。

公式リポジトリには、導入方法、単変量と多変量の使用例、ライセンス上の注意が掲載されています。 ソースコードにはApache License 2.0が適用されますが、TimesFM 3.0の事前学習済みモデル重みには別のライセンスが適用されます。 標準の重みを商用または本番で使うことは認められていません。

GITHUB · REPOSITORYGoogle Research公式TimesFMリポジトリgoogle-research/timesfm

検証範囲を決めるには、予測結果を受けて誰がどの意思決定を変えるのかを最初に定めます。 手順は次のとおりです。

  1. 発注数や勤務人数など、予測後に変える意思決定を一つ決める
  2. 予測対象と、予測時点で利用可能な共変量を一覧にする
  3. 過去の一定期間を隠し、現行手法とTimesFM 3の双方で予測する
  4. 誤差に加え、欠品や余剰在庫に換算した場合の差を比べる
  5. 運用費、実行時間、ライセンスを含めて本番採用の可否を判断する

最初から全商品を対象にする必要はありません。 販促の影響が大きく、欠品や廃棄の記録がそろう商品群に絞ると、予測の差が事業上の判断へ及ぼす影響を追いやすくなります。

TimesFM 3とBigQuery版では扱える変数が異なる

TimesFM BigQueryを利用できても、TimesFM 3を試せるとは限りません。 2026年9月10日時点で、AI.FORECASTのモデルとして公式文書に記載されているのはTimesFM 2.0と2.5です。 TimesFM 3とは、扱える変数も異なります。

BigQueryの予測手法比較によると、組み込みTimesFMは学習済みモデルを一つの関数で使えますが、共変量には対応していません。 id_colsで商品や店舗を区別して複数系列を処理しても、各系列は単変量予測として扱われます。 複数系列の一括処理と、系列間の関係を使う多変量時系列予測は別のものです。

選択肢向いている状況主な注意点
BigQueryのTimesFM 2.5SQLで単変量予測を早く試したい共変量を使えず、調整や説明の幅が狭い
TimesFM 3の公開モデル多変量予測を研究開発として検証したい標準モデル重みは商用、本番利用不可
BigQueryのARIMA_PLUS_XREG外部変数を使い、モデルを調整したいモデルの作成と管理が必要

Google Researchは発表時に、BigQueryへのTimesFM 3統合を予定していると説明しましたが、提供開始日は明記していません。 製品を選ぶ担当者は将来の提供予定を前提にせず、AI.FORECASTの最新仕様で利用可能なモデルと共変量への対応状況を確認します。

予測精度は事業指標と運用条件でも評価する

予測精度を比較するときは、過去の時点へ戻った条件で予測します。 将来の情報が混入すると比較条件が変わるため、当時入手できた情報だけを入力し、現行手法と同じ条件で比べます。

評価担当者が固定する条件は、次のとおりです。

  • 予測期間は、発注リードタイムや勤務表の作成周期に合わせる
  • 比較対象には、前年同週、移動平均、現在利用している予測を含める
  • 入力可能時点は、販促、価格、天候などを当時分かっていた値に限定する
  • 集計単位は、全体平均に加え、商品、店舗、繁忙期ごとの差を見る
  • 事業指標では、欠品数、廃棄量、在庫金額、予測修正に要した時間を確認する

BigQueryのTimesFM 2.0と2.5を比較候補に含める場合、AI.EVALUATEの公式仕様に基づいて、平均絶対誤差、平均二乗誤差、平均絶対パーセント誤差などを算出できます。 ただし、売上がゼロに近い商品では割合誤差が大きくなりやすいため、金額差や数量差も併記すると評価担当者が判断しやすくなります。

平均誤差だけで採用を決めると、欠品と余剰在庫のどちらを重く扱うかが評価に入りません。 この優先順位を決めるのは、業務の責任者です。

運用条件も、本番採用の判断に含めます。 予測精度が改善しても、担当者が発注締めまでに結果を確認できなければ、業務上の効果は出ません。 例外商品の修正方法も必要です。 本番採用の基準には、精度、更新頻度、障害時の代替手段、予測理由に求める説明の範囲を含めます。

まとめ

TimesFM 3は、複数の商品や店舗の系列と、販促などの共変量を組み合わせて需要を予測するモデルです。 担当者は複数系列をまとめて処理し、計画済みの施策を予測へ反映できます。

導入前には、予測時点で取得できる共変量があるかを確認します。 そのうえで、現行手法と比べた欠品、余剰在庫、作業時間の変化と、利用する提供形態の商用および本番利用条件を評価します。

公開済みのTimesFM 3は検証候補ですが、標準モデル重みの利用条件上、そのまま商用システムへ移すことはできません。 BigQueryのTimesFM 2.5やARIMA_PLUS_XREGと比較する場合も、利用条件と機能の違いをそろえて評価します。

まずは対象を一部の商品群に絞り、過去データで比較します。 予測誤差と事業上の損失を同じ検証表に記録すれば、TimesFM 3が自社の条件で欠品や過剰在庫を減らせるかを判断できます。

参考文献